くらやみに ろうそくを」カテゴリ内の記事を表示しています。
子どもが夏休みの工作の宿題に、廃油を使ったろうそく作りをすると言い出しました。工作の宿題アイデア集を本屋で買ってきて、しばらく見ていたのですが、なぜろうそく作りに決めたのか(他に、きれいで楽しそうな例がいくつも載っていたのに)、聞かなくても分かるような気がしました。東日本大震災を経験したからです。
電気の消えた、まっくらな夜。それはほんとうに、まっくらでした。暖房も電気がなければ動きません。まともに食べられない空きっ腹を抱え、みんなしずかに布団に入りました。寒さに空腹、おまけにまっくらです。荒野...
ろうそくを作るといっても、そんなに難しくはありません。廃油でもいいし、もちろん仏具用ろうそくでも構いません。蜜ろうを使ってもいいでしょう。このような、ろうそくの素となる材料に、明かりを灯しつづけるための芯(たこ糸など)を入れ、お好みで色を付ける(クレヨン等)なり、アロマオイルを数滴垂らすなどして香りを加えてもいいでしょう。おしゃれにかわいくデコレーションしてもいいでしょう。思いつくままにアレンジの幅を広げて幾つも作ればカラフルで個性的なろうそくが出来上がるでしょう。子どもでも簡単に作ることができ...
ゆらゆらと揺らめくろうそくのあかりは、まるで生き物の鼓動のようです。生きているかのようです。荒野の動物たちの皮膚に近く、ぬくもりが感じられ、でもどこか、ひやっとする。残酷な冷たさもある。この抽象的なイメージはどこからくるものか。食卓のろうそくを私もいっしょにながめながら考えていました。
子どもは無邪気な眼差しでした。作ったことの満足感にも浸りながら。
あまり大げさに考えないほうがよいのかもしれません。子どもはただの思いつきでろうそくを作りたいと言い出しただけかもしれませんから。へんに感傷的になる...
夏休みが終わると工作の課題は、子どもの手によって速やかに学校に運ばれていき、子どもはそれなりの評価を先生からもらい、そうして何ヵ月かは教室の隅っこに飾られていました。子どもたちは工作のことを忘れていきました。
そうして冬休みが始まる前に、私物は各自の家庭へと持ち帰られて、そのなかに、うっすらと埃をかぶったろうそくも混じっていました。なんだか色あせて見えるようです。子どもの注目から外れてしまったろうそくは、あの生き物のような生気を失っています。火を灯してみましたが、その印象に変わりはありません。
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